「追検査」とは?

突然ではありますが、次の公立高校入試から「追検査」を実施する旨が神奈川県教委より発表されました。「追検査」とは、入試の学力検査について別日程で行う措置のことです。次回の公立高校入試における学力検査は来年2月14日(水)ですが、この措置によってインフルエンザの罹患や学校側の判断によりやむを得ない事情があった場合のみ20日(火)に「追検査」という形で学力検査を受けることができるようになります。

なお、最新の発表によると、この追検査が実施されるのは学力検査のみで、面接や特色検査については追検査の対象ではないとのことです。また、追検査の承認には、インフルエンザやノロウィルス感染等の医療機関の診断書と中学校の校長の証明書が必要になるとのことです。

「追検査」導入の経緯

追検査はもともと神奈川県教委の入試改革には組み込まれていませんでした。ところが、2016年2月インフルエンザに罹って実力を発揮できなかった相模原市の受検生が自殺し、その後を母親も追う痛ましい事件が起こりました。これが国会で審議に取り上げられ、急遽全国の「追検査」の実施状況が調査されました。すると、11府県市に留まっていることがわかり、すぐに追検査実施について文科省から全国の教育委員会へ通知と至りました。

対応に見える温度差

鳴り物入りで導入となりましたが、実は各教育委員会は歓迎の意を示していません。その理由は、①入学検査の日程に余裕がない。②2つの学力検査の問題のレベルを完全に揃えることが難しい。③現行でも保健室等の別室で受検できる体制を整えている。といったものです。

確かに①は卒業式までの日数から逆算してぎりぎりの日取りで行っており、入試日の前倒ししか方法が残されていません。ところが、教科書の内容を完全に終えることも必須課題であるため、入学者選抜期間を動かしたくないのが本音なのです。

また②のように、異なる受検問題でレベルを揃えた作問をするのは困難であり、その労力も1パターンを単純に倍にすることとは大いに異なります。

③については、やや国会審議の意図から逸れた理由です。「体調管理も受験のうち」ということのようですが、このあたりに「官」と「民」との温度差があるのでしょうか。

まだ利便性に欠ける制度

この追検査、何より注意が必要なのは、学力検査の会場が一か所に決められていることです。場所は神奈川県立総合教育センター善行庁舎です。この近辺の受検生にとっては「朝が辛い」場所となります。

また、追検査を請願する際には、中学校で得た「追検査受検願」と医療機関で得た「診断書」等を志願校の校長へ提出します。ところが、各書類の提出期間は2月14日の午後1時から4時、翌15日の午前9時から正午までと受付時間はかなり制限されています。さらに、面接や特色検査には「追検査」がありませんので、他の入学検査と並行しながら請願手続きを行うことになります。特に試験日の朝に症状が出始めた受検生には書類の用意や提出が困難になるでしょう。とても体調不良に苦しむ受検生に委ねられる仕組みではありません。

追検査を真の助け船と捉えられるかは、まだ疑問が多いようです。

※この記事は「学指会通信」151号からの抜粋しました。