新しい学習指導要領がスタートします

約10年ごとに改訂が行われる学習指導要領。小学校では2018年度からの移行措置期間を経て、いよいよ2020年度から新しい学習指導要領が完全実施となります。

新学習指導要領における変更点として、「外国語」と「道徳」の教科化や「プログラミング教育」の導入が大きく注目されていますが、今回は小学校算数に着目して、学習内容と要点をまとめます

※新学習指導要領「生きる力」パンフレット(文部科学省)

 

新しい時代に必要な資質・能力の3つの柱

新学習指導要領では、新しい時代で“生きる力”を子どもたちが身につけられるよう、「何ができるようになるのか」を明確にしながら、全ての教科で ①知識及び技能 ②思考力、判断力、表現力 等 ③学びに向かう力、人間性 等 の3つの柱からなる資質・能力を総合的にバランスよく育成することを目指しています。

小学校算数科においては、

①知識及び技能

数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などを理解するとともに、日常の事象を数理的に処理する技能を身につけるようにする。

②思考力、判断力、表現力 等

日常の事象を数理的に捉え見通しを持ち筋道を立てて考察する力、基礎的・基本的な数量や図形の性質などを見いだし統合的・発展的に考察する力、数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり目的に応じて柔軟に表したりする力を養う。

③学びに向かう力、人間性 等

数学的活動の楽しさや数学のよさに気づき、学習を振り返ってよりよく問題解決しようとする態度、算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。

の3つの柱を根底とし、各学年で指導が行われることとなります。

さらに今回の改訂では「どのように学ぶか」ということも重要視され、学びに向かう力を育むために「主体的・対話的で深い学び」という視点で授業が構成されます。数や図形の性質を理解したり計算の仕方を覚えたりするだけではなく、生活や社会の中で算数・数学の思考がどのように役立っているのかということに興味を持ったり、友だち同士で考えを伝え合うことで自分の考えをさらに広げたりしながら、学びを人生や社会に生かそうとする力を育成していきます。

 

小学校算数の改善事項は大きく2つ

“生きる力”につながる「主体的・対話的で深い学び」を実現するため、具体的には2つの事項があります。それが ①日常生活等から問題を見いだす活動の充実と、必要なデータを収集・分析し、その傾向を踏まえて課題を解決するための統計教育の充実 ②コンピュータでの文字入力等の習得と、プログラミング的思考の育成になります。この2点によって、知識の理解の質を高め、これからの時代に求められる資質・能力を育むとされます。

①統計教育の充実

これまでも小学校算数で学習してきた「数と計算」「図形」「測定」「数量の変化と関係」という学習項目に加え、「データの活用」という項目が新たに登場します。より複雑なグラフを扱ったり複数のグラフを比較する学習を行い、場面に応じて適切なグラフを用いることができるよう、それぞれのグラフの特徴を理解します。また小学6年生では、これまで中学1年生で学習していた内容も扱い、中央値や最頻値といった統計的な考察の幅も広げます。

②プログラミング的思考の育成

数量や図形についての感覚を豊かにしたり表やグラフを用いて表現したりする手段として、コンピュータを活用し文字を入力するなどの基本的な操作を行います。また、合同な図形の敷き詰めや正多角形の作図に関連して、正確な繰り返し作業を行うことや一部を変えることで他のいろいろな多角形にも対応できることを学びます。

 

算数的活動から数学的活動へ

新学習指導要領では、これまでにはなかった「数学的」という表現が繰り返し使われています。数式にあてはめて答えを出す「算数的」活動にとどまらず、数学的に処理し数学的に考え数学的に表す力を育成します。

「数学的に処理する」とは

表やグラフにまとめたり、数量の変化や関係を理解することです。いくつずつ増えていくのか、どのような表にまとめるとわかりやすいのか、といったことを考えながらデータの整理をしていきます。

「数学的に考える」とは

見方を変えて筋道を立てたり、さまざまなケースを想定して文字式に表したりすることです。数や計算についての理解を深め、計算方法や図形の面積・体積の求め方を異なる視点から考えたり、表やグラフを読み取って数量の関係を一般化したりする力を鍛えます。

「数学的に表す」とは

どのように考えたのかを図・数・式・表・グラフを用いて説明することです。どのようにしてその式が導かれたのか、2つの表のどの部分を比べたのか、といったことを書いてまとめたり発表したりする活動が増えます。

 

日常生活にも数学的思考

適切な情報や知識を活用して、筋道を立てて考え未知の問題を解決していく「数学的」思考力は、急激な発展を続けるこれからの時代においてますます必要となることは間違いありません。また、授業中や机に向かっているときだけでなく、日常生活にも数学的思考を発揮する場面は多くあります。

例えば、「1,000円持っているけど、この148円のペン何本までなら買えるかな。」この場合、1000÷148を計算すれば答えは求められますが(算数的思考)、計算を簡単にするために148円→150円と概数を用いることを思いついたり、さらに「2本まとめて1セットにするとだいたい300円だから1000÷300をして3セットは買えるなぁ…」と工夫して考える子もいるかもしれません。

 

最後に

時代や社会の変化の中で学校教育が進化していくとともに、私たち大人も日常生活において、子どもたちが学んだことを活用したり新しい発見・発想が生まれたりするきっかけ作りをしていく必要があると考えます。学指会では今後も、自分で考え表現する力を身につけられるよう、授業内外の対話を重視し、また教科の壁にとらわれず指導にあたっていきます。

小学生担当 カネタカ