高校進学事情

「人権」に揺れる教育現場

 

埼玉県には現在5つの男子校、7つの女子高があり、偏差値72の浦和高校を筆頭に平均偏差値65を擁す存在感を示しています。男女別学の是非について、公立高校男女共学化に関する県民意識を調査するアンケートを実施しました。

これは2000年代に入って男女共同参画の動きが活発となり、押し寄せる苦情に県教委が対応を始めたのがきっかけです。しかし、当座は結論を先延ばしにする形で幕を引きとなっていました。

 

埼玉県の高校出身の私は、「体育祭の歓声に黄色がない。ドス黒いんだよ。」という友人の嘆きが記憶に焼き付き、男女別学は嫌悪の対象と認識していました。通学者の感想という限定情報が発端ではありますが、男女共同参画の意識など日常で全く触れない昭和の時代は固定観念の醸造も容易でした。

 

授業効果の向上や性差に合ったカリキュラムが作れる男女別学のメリットは、時代の変化とともに、男女共同参画・多様性・ジェンダー平等の波に揉まれて、新たな段階を迎えているのです。

実は、中高校生とその保護者を対象にしたアンケート調査の結果は、「どちらでもいい」とする意見が大半で、賛否についてはほぼ同じ割合でした。

しかしながら、少数派の意見も拾われるが令和です。そして、多様性の受容とジェンダー平等、男女共同参画との線引きをどこに置くかという難しい判断を迫られている時代でもあるのです。

 

前述した男女別学の利点の多くは指導側の視点も多く含んでいます。埼玉県教委は、施設や人員に新たな出費や労力が嵩む共学化は避けたいのが本音にあるでしょうが、方針を数年で変えられない重い決定のため民意に委ねる道を選ぶと考えられます。

この一見氷炭相容れずの人権問題、すでに神奈川県では共学化という答えを出していますが、進化するジェンダー論にマイナーチェンジを強いられる可能性があるといえるでしょう。

             K・Y 学指会通信231号より