学指会通信187号より

塾関係者を対象としたセミナーにおいて、直近の進学事情データ等が発表されました。2020年度の注目点として挙げられたのは、「公立」と「私立」、どちらのブランドが人気を集めるかという点でした。

通信の7月号でも触れましたが、授業料等にかかる費用の壁が低くなり、何かと気配りが及ぶ私立高校の人気は上昇すると考えられます。すでにご周知のことでしょうが、神奈川県では「6:4協定」(県内の卒業生の約60%を公立高校の定員、約40%を私立高校の定員とする協定。すでに2020年度の卒業生については61.0%が公立高校全体の定員となっています。)がありますので、年々生徒数が減少し、既定の枠組みの中で生き残るために私立高校側も必死です。中でも目立っているのが、新型コロナの流行を背景として「書類選考」による選抜形式が増えていることです。今夏明けから急遽変更した私立高校も多く、感染拡大防止を理由に「学力検査」や「面接」をカットしています。(近隣の私立高校の事情については、11月末から実施する「進路面談」でお伝えすることができますので、お気軽にご質問ください。)この選抜形式の変更も相まって、私立高校は順調なペースで推薦希望者を確保しています。

実は上の表のようなデータもあります。2019・2020年度と、公立高校の倍率で1倍を切った高校の割合が急増していることです。2020年度に至っては、競争率が1倍を下回った校数は過去最多です。つまり、協定枠の約6割を保っても、県外校を含めて自ら私学を希望する生徒が増え、競争率が低下したことがはっきりと窺えます。

一方公立高校の情報としては、秦野曽屋と秦野総合学科高校では1クラスの定員削減が行われます。昨年度の同時期のデータから割り出した推定競争率は秦野曽屋高校で1.11倍、秦野総合学科高校で0.94倍程度の数値です。秦野曽屋高校は低迷していた競争率が一気に高まる可能性があり、秦野総合学科高校は1倍程度に留まる様相です。これは、旧秦野・伊勢原学区内の卒業生数が減ることに加え、電車通いが必要な私立高校しか選択できない事情が反映されているようです。しかし、県央地域から流入しやすい条件にある伊志田高校は、著しく希望者が増えています。私立高校への進学希望者が微増のうえに、同程度の水準である厚木東高校が、2024年春から厚木商業高校との統合を控えて定員を減らしていることが影響していると見られます。

全般的に、神奈川県中央部・西部では偏差値45のラインが公立高校の競争率の増減を決める傾向を示し始めているようです。この分水嶺に立っている受験生は志望校選択を特に慎重に進めるべきでしょう。

Y・K