来春から変わる中学の教科書

渾身の改革 「中学英語」

質も量も過去最高難度

小学校での英語教育改革に続き、来春から中学校でも「新学習指導要領」下での指導が始まります。そして、改訂された教科書の導入が始まります。

当然ですが、中学校の学習に今の高校生が習う学習分野が下りてきます。具体的な文法単元としては、「原形不定詞」「現在完了進行形」「仮定法」が挙げられます。また、目標語彙数も1600~1800語に増え、現在の1200語より多くなります。現在、小学校3年生から6年生まで600~700語の習得を目指しています。つまり、小・中学校を合わせると、最大で2500語となり、現行のほぼ2倍となります。現在の高校では1800語程度(受験を目した場合はその限りではない)の目標語彙数ですから、新しい指導要領では高校2年生ぐらいの領域を中学3年生までに学ぶようになるのです。

高度化が要求される背景

目標語彙数のみならず、高度な文構造の習得まで目指すのには理由があります。

文部科学省によると、中学生と高校生が「CEFR」(外国語を学習している人の言語運用能力を客観的に示すための国際標準規格)の達成目標レベルに達している生徒の割合が少ないことが明らかになっています。中学生ではA1レベル(英検3級程度)、高校生ではA2レベル(英検準2級程度)を目標としていますが、2018年度の全国調査では、達成した生徒は約4割でした。

このような状況はグローバル化に伴うコミュニケーションスキルの危機感を募らせ、2020年から英語教育を一変させる起爆剤となったのです。

 

 

 

 

 

次世代型学習が望まれる

予定になかった新型コロナや大臣の問題発言により、記述を取り入れる大学受験も不完全な稼働となっていますが、中学の教科書の改訂は影響を受けていません。確実に迫る大波をどう乗りこなすか…改革黎明期は塾などがその役割を担い、結果を創生するでしょう。しかしながら、高校の分野だった単元を、「使役動詞」や「知覚動詞」といった用語を繰り出して進めるだけでは、改革の本質から逸れるばかりか、副次的に英語嫌いを量産してしまうかもしれません。「聞き手に相応しい説明」…指導者側も手腕を問われる機会となるしょう。

2022年度には高校で「新学習指導要領」が年次進行で実施され、2024年度には「新学習指導要領」に準拠した大学入試も始まります。現在の中学2年生から下の学年は、学習の「5G」化と確かな自覚が求められます。そして、地道な作業を継続させる必要性に気付いて主体的に学習を進めてほしいと切に望みます。

                          K・Y

※この記事は学指会通信より引用しました。

学指会通信186号